あの子の お口/千月 話子
晴れだった。
身も心も爽やかな 今日は縁側の風鈴日和
白桃に頬擦りして 口角でキス
冷蔵庫 開けっ放しにしないで下さい。
並べられた もも もも もも から
甘い香り立ち昇り あの子のお家は桃の家
北の窓からそよ風が そぅ と入り込んで
桃の実をかじって逃げた 南の窓へ
偶然 ピンクのカーテン揺らして。
お嬢様は きれいに桃をお食べになるの
ナイフとフォークを器用に使って
切り分けられた皮と実と種の対比
『切ない:可愛い:醜い』を並べて
少し実の付いた種の正体を口の中で剥がしゆく
程なく現れた 赤いアバタに
「お化粧がお上手ですね。」と皮肉
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