異常な時代に抗する言葉/岡部淳太郎
見ようとしていない。誰もが自分の足元だけを見て、他人を見ていない。そこから礼儀も尊敬も、すべての良き心が失われてゆく。そんな異常な時代に対応するため、新しい言葉やモノが次々と発明され、それらは急速に社会に浸透してゆく。逆ギレ、セクハラ、ストーカー、女性専用車両。みんな昔は存在しなかった言葉だ。
この異常な時代、人心が荒廃し、一寸先が見えないもやもやした不安に包まれる時代に、詩を書く者はどう対処していけば良いのだろうか。飯島耕一は「現代詩手帖」2005年1月号の鼎談で「バス停に五分間立っただけで、ひどい世の中ってわかる」と言っている。同時に飯島は「世界に対するとか、時代に対するとかそんな言い方が
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