走り抜ける/チアーヌ
呼ばれていく
わたしの行く場所は
今はもうない
小さな平屋の家
家々の裏をすり抜けるように駆け抜け
小さなコンクリートの階段を上がると
カラカラと音がするサッシの引き戸
薄いガラスが嵌め込まれて
あけるとそこには小さな玄関
お友達の靴がたくさん散らばって
わたしも靴を脱ぎ上がる
板張りの廊下
玄関に入ってすぐ右側に
子供部屋
お友達がたくさんいる
色の黒い坊主頭のお兄ちゃん
赤いスカートを穿いたお姉ちゃん
それからまだ小さい妹も
お母さんの顔は覚えていない
首から上がどんな感じだったか
夕餉の煮物の匂いがどこからか漂って
遊んでいるうちに日が傾いていく
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