Cafe Le Poete ♯2/服部 剛
ーをメモにとり
カウンターの中でマスターは
右へ左へひっきりなしに動きながら
額に汗を滲(にじ)ませて
フライパンを手に取っては
威勢のいい炎を昇らせている
メインディッシュのステーキを
しあわせそうにほおばる僕に
「足りる?」
といつもの言葉をかけるマスターに
「今夜の夕食は最高です!」
と言いながら
ワインに酔ってふやけた脳裏のどこかで
写真の中のひとりの子供を守る為
こんなにもひたむきなふたりの背中が
三十歳になった僕の
両親の昔より少しかがんだ背中に重なり
長い間忘れていた想いが
胸の奥で泉となって湧き出(い)ずる
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