Cafe Le Poete ♯2/服部 剛
 
レジの上に置かれた写真立ての中で
歩き始めたマスターの子供が
両手を握り 膝(ひざ)をかがめ
階段から飛び跳ねようとしている

怖れを越えた先にある
未来の着地点を
澄んだ瞳で見据(みす)えて

今夜の店内は大盛況
四方八方のテーブルから
機嫌よく会話を弾ませる言葉達が
カウンターに座る僕の背後で飛び交っている

一月(ひとつき)前の夜
店内の客は仕事帰りでくたびれた僕一人
心配顔で店のドアを開けた
母親と息子のマスターは店の外に出て
重い沈黙に口を結んで向き合っていた

一月後の今夜
カウンターの外で奥さんは
次々と頼まれるオーダーを
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