無題/菅原 夕輝
 
つになったら外れるのだろう
偽物の唇が動き 思ってもみないことを楽しげに言ってみせる
両手には 愛せなかった言葉達が絡みついていて
懸命に書き綴った思いなど もう何処にもないと知ったんだ
僕には 遠い明日など無意味な事で
それこそ意味があったようだ

分かっているよ
分かってる
全部が良くできたお話だ
ここからでもちゃんと見える
あの可愛らしい頬をそっと撫でて 絶望が笑っている
僕は助けようとも 救おうともせず
笑おうともしないで様子を眺めている
考えても同じ 最初から景色は褪せていて 世界との距離は違っていた
信頼できるものなんて何ひとつ無い

陽は昇る
心が
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