無題/菅原 夕輝
から 世界は狂っていた
いつしか 鳥は空を飛ばなければいけなくなった
力尽き果てるまで
途方もない蒼を彷徨うため 羽を広げる
人はそれを自由だと云うけれど
いつまでも続く海に 自由なんてものは少しも見当たらなくて
羽を広げては 終わりのない蒼を憎んだ
傷だらけだって事を認められはしなかった
やがて 枝這う蔓(つた)は伸びていく
花追う風は吹き抜ける
無力になってしまった落葉樹の葉が積もり
固められた土に還る支度を始めた
流れていく空気を 止めることなんて出来なくて
痺れるような鼓動は 脈打つ速度を緩めていった
あぁ この脚に科せられた鎖は
いつに
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)