無題/菅原 夕輝
い放って欲しい
けれど 言われるのも怖かった
つまらない仕事を 誰かがやるのを待っていて
冷たい部屋で 溶かされてしまうのを待ち望んでいた
隣では
輝く陽射しが見えている
人々は夜が「怖い」という
けれど本当に怖いのは朝だと うつむきながら答える
ただ眩しくて 此処の暗さを隠し守りたかった
明るさに出れば全てが見える
喜び 優しさ そして
生きるものが生きる途中で造っていく醜い心の塊や
触れて欲しくはない繊細な傷口
それなのにカーテンで遮った光は どうあがいても漏れてきて
気付いたら 為す術もなく 伏せがちな目を逸らしていた
その手のひらは温かく
鮮烈に残る
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