浄土ヶ浜/王
涙の分だけ人は強くなるだなんていいます
どうも僕は例外のようだ
どんどん浸食されるかのようにぼろぼろになるのです
涙の塩分が錆びさせていくようです
そして今や海綿のように穴だらけで涙を吸ってぶくぶく膨らむのです
いや以前涙は甘美なものでした
泣けばなにかもかも洗い流せるような
やがて落ち着けば5月のうたたねのような
けだるくも安らかな気持ちになったものでした
しかし今やそれは洗い流すのではなく壊していきます
それは無能を知るということ
それは無力を知るということです
絶望は身近で安易です
スイッチ一つで絶望はくるのです
泣けば足元が崩れる気がするでしょう
でも
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