ヤコブの梯子/佐々宝砂
もう許しを得たのかいつくしみふかきイェスよ
俺は目を閉じて澄んだ声に身をゆだねる
少年の声だけではない
たくさんの澄みとおった声が俺を取り囲む
調和した・不安のない・美しい
濁りのない・混じりけのない・歌声が
いや。
何か和にならないものが聞こえる。
不安げな・なつかしい・いとおしい声が
俺の名を呼んでいた
俺にはその声が見えるように思われた
揺れ動くやや赤みを帯びた光は
懐かしい声が呼ぶ俺自身の名は
一直線に俺の前におちてきた
俺は俺の名前にすがった
俺の名を呼ぶ温かい光にすがった
そうして俺は叫んで応えた
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