ヤコブの梯子/佐々宝砂
華やかなクリスマス・ツリー
見慣れた店内
白塗りの顔をした女
突然あかるく眩しい白い光が目を射る
どこからやってきた光なのか俺にはわからない
そしてあたりに響きわたる聖歌
いつくしみふかき と歌う声は
うすらいのように澄んだボーイ・ソプラノ
光の中から少年がやってきて
カウンターの中の天使像に向かって言う
マスター ぼく パパを連れてくよ
いいじゃん もう 死にかけだもん
四年も眠ったままなんだもん
少年は俺の腕を握る
うすらいのように冷たい手で
石になったマスターは何も言わない
行ってしまってもいいのか俺は
もう
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