ヤコブの梯子/佐々宝砂
ラオケが終わる
マスターが拍手する
俺はおざなりに三回ほど手を叩く
女がウインクして微笑む
美人だがウエストが寸胴だ
そういえば俺がつきあってきた女たちは
なぜかいつもウエストが寸胴だ
彼女も そうだ今にはじまったことじゃない
昔からあんな体型だったじゃないか
あれはたぶん年齢のせいではなくて
どくん。
不意打ちの頭痛が襲ってくる
壊れかけた肺がうずく
微笑む女の顔がまっしろに塗りつくされる
俺はマスターの姿を探す
すると彼は石でできた天使像に変わっている
なんだ?
俺は目をこする
幾度も幾度もこする
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