書評: 『世界で一番美しい病気』/中島らも/mana
 
美しい。コトバが生み出す光景がこれほどまでに美しいだなんて。

 しかし、この台詞が美しいのはこれが「物語」だからである。確かに「耽美派」なんてのがどこかへぶっ飛んでしまうくらいに、僕はこの物語に美を感じた。

 けれど。

 この世で生きていこうと思うなら傷などついて当前なのだ。それは「つけられる」ものでもあるし、「つける」ものでもある。どちらか一方だなんて有り得ない。ここで生きている僕たちは、いつでも加害者であり被害者で。そしてだからこそ、なんとか生きていけるのだ。 「傷つけたくない」という思いだけが募ってゆけば、もはや身動きなどは出来ない。そして「傷つきたくない」という思いだ
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