雨の山道/渡邉建志
 
雨が降っていた
暗い門の下で
男が三人いて
僕がその一人だった
門の先に続くのは
センチメンタルな山道だ

雨が小降りになってきたので僕は歩き出す
男が「大丈夫かなあ」と言っている
分からない

細い山道は哲学の道よりもっと狭い
二人並んでいっぱいだ
鹿ケ谷通りよりも寂しい
人はほとんど通らない
客のいないラーメン屋が三軒並んでいる
近くに天使たちの通う高校があるが
どうやら今日は休みらしい
平日は天使がここで
ラーメンを啜るのだろう

宿に着いて玄関から中を覗くと
暗くて誰もいない
こんにちはあ、こんにちはあと叫んだら
あごひげを伸ばした兄が出てき
[次のページ]
戻る   Point(10)