俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
転手のことを考えているのだ。
コータは言おうとしたことを失念してしまった。その口から出たのは、まったく別の言葉だった。
「お前、いい匂いがするな」
自分でも思いがけない発言。顔が熱くなった。見ると、トモコの顔も真っ赤。
「あっ、いや、あの、深い意味は・・・」
コータはあわてて弁解しようとした。
突如、トモコが跳ねた。数メートルもの高さを一気に飛び降りた。華麗な着地。あっけにとられているコータを尻目に、ゆっくりと身体の向きを変える。コータを見上げる。笑っている。
「ねえ、今日は学校サボって、ケーキでも食べに行こうよ」
優等生の彼女にしては大胆な提言。トモコは、コータが自分を
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