俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
 
さな町の出来事だった。
 だからコータの目にはまるで世界中の自動車が一堂に会したように映った。
 高校を卒業したら真っ先に運転免許を取ろう。これからはクルマの時代だ。オートバイもいいな。
映画のシーンみたいに後ろに女の子を乗せて走るんだ。そうだ、こいつも乗せてやろう。
 コータは興奮して幼なじみの顔をのぞき込んだ。
「トモコ、あのさあ・・・」
 そのとき、いい香りがした。石鹸の匂いだろうか、少女の体臭だろうか、得も言われぬフレーバーに少年の野性が覚醒した。
 コータは突然トモコを力まかせに抱き締めたい誘惑にかられた。
「えっ、なあに?」
 トモコがぼんやり応える。まだバスの運転手
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