俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
 
た隙に彼の姿は消えていた。

 救急車が走り出した。サイレンが喧しい。警察官と消防士、そしてレスキュー隊がおもむろに撤収をはじめた。旅 まわりの劇団が最後の公演を終え、テントをたたみ舞台装置をトラックに積み込んで、次の巡業地へと立ち去って行くような慌ただしさだ。観客である弥次馬たちも潮がひくように減っていった。それにつれて渋滞が解消され、待ちぼうけを食わされていたクルマたちもスムーズに流れだした。あの運転手のバスもその中にあった。
 列の最後の一台が行ってしまうと、辺りは静けさを取り戻した。元々そう煩雑にクルマが通る道ではないのだ。交通量は絶対的に少なくて、信号機も駅前に一つあるだけの小さな
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