俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
 
切れないものは何もないぞと言わんばかりの、意欲満々の炎。
 ふいに挟まれていた手首が軽くなった。ずるっとリングから抜けた。シゲジロウの身体は、そのまま地に崩れ落ちるところを、左右から救急隊員に抱きとめられた。
「やったぞ!」
 群衆の一人が叫ぶと、一斉に拍手の嵐。その中を怪我人は担架にのせられて救急車まで運ばれた。
 レスキュー隊はちょっと拍子抜けした。というのも、弥次馬の側からはバーナーの炎が販売機の内部を瞬時に焼き切ったように見えたが、実際はその前に手首が勝手に外れたのである。
 木の上からは一目瞭然だった。
(・・・・・・?)
 トモコは運転手の方を見た。しかし一瞬目を離した隙
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