俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
 
火炎放射器みたいなのは?」
 コータがトモコの耳のそばで呟いた。吐いた息がトモコの首筋をくすぐる。
 弥次馬を掻き分けてガスボンベのようなものを背負ったレスキュー隊員が販売機の前に立った。ボンベから伸びたホースの先の金属製の筒を両手で握っている。
「点火用意!」
 リーダーらしき男が日頃の訓練の成果を見せるべくマニュアルに従って叫んだ 。バーナーを持つ隊員の方も、ついに新装備を実地に使用できるので緊張している。
 シゲジロウは薄れていく意識の底で、破壊された販売機は誰が弁償するのかと考えていた。
「点火!」
 その声と同時にバーナーは紅蓮の炎を鋭く吐いた。見るからに、この世に焼き切れ
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