俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
 
いく。道行く人々は誰も彼の存在に気づいてないかのようだ。
 それを追ってトモコがダッシュした。はずみで学生カバンに付けてある鈴がひときわ高く鳴った。
「ご、ごめん。ちょっと通して」
 前を歩いていた二人の女子中学生の間を無理やり抜けた。その後は次から次へと歩行者を左右に突き飛ばしながら走った。

 俵松酒店の前は厚い人垣ができていた。どういう経緯で出動することになったのか不明だが、当地に駐屯しているレスキュー隊も特別仕様車で駆けつけていた。
 謎のバス運転手は器用に身をかわしながら、その人垣の中へスッと消えた。
「あっ、スイマセン、スイマセン」
 すぐ後ろまで迫っていたトモコが、な
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