俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
っていたのだから。
町営バスの運転手だった。
その後ろ姿を見て妙な気分になった。何かがオカシイ。トモコはいつも運転席に座っている彼しか見たことがなかった。だから歩く姿が意外に思われたのだ。
しかし奇妙な感じがするのは、そのせいではない。
その歩き方だ。
彼は全身を硬直させて、まるで一本の柱のようだった。移動する柱である。両手を真っ直ぐ下ろし、伸ばしきったまま前後に振って歩く。両足も真っ直ぐなままで、関節がないみたいに膝を曲げずに進む。
しかもその不自由そうな歩き方で、恐ろしく速い。登校する生徒と弥次馬でいっぱいになった狭い歩道を、だれにも触れることなく風のように前進していく
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