俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
り付けてやろうかしら。
トモコは内心で毒づいた。けれども、やがてコータに触れられた所が火傷の記憶みたいに疼きだした。コータの言葉が心の中で何度も旋回した。
オレハソンナトモコノ ホウガスキダナ・・・
スキダナ・・・、スキダナ・・・、
ふん。何だって言うのよ。それじゃあ、今のアタシは嫌いなわけ!
トモコは急に悲しくなった。目から奇麗な水が数滴こぼれた。
と、その時。
後ろから来て彼女の脇を早足ですり抜けたものがあった。
白いキャップを深く被った縦長の後頭部。茶色のジャンバーに黒ズボン。それは毎朝見慣れた恰好だった。だいいち、さっきまで彼が操縦するクルマに乗って
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