俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
 
ち出して来てリングと手首の隙間に突っ込もうと焦る。何事かと駆けつけたツルエは滴り落ちる大量の血に腰を抜かしてしまった。
「いつでも平常心を保っている」はずの老人が、すごい形相で吠えた。
「バカ野郎! 何グズグズしてるんだ! 電話しろっ! 警察だ! 救急車だ! レスキュー隊だ!」
 その剣幕に押されたのか、それとも夫婦愛からなのか、ツルエは必死に電話のあるところまで這って行った。そして110番すると受話器に向かって支離滅裂にたたみかけた。
「たいへん! ウチの主人が大災害! 血まみれ! 爆発した機械にね、挟まれてっ!」
 数分後、パトカーが救急車を先導してすっ飛んで来た。そのあとを消防署の
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