書評: 『リバーズ・エッジ』/岡崎京子/mana
と見ただけで、それは明らかに「気持ち悪かった」。けれど『リバーズ・エッジ』のなかで描かれる「宝物」は、どんなセリフで補われれても、主人公と同じように、なんだか遠い。遠くて、実感がわかない。そこに乾いたものを感じる。もうひとつ、この作品のなかで描かれている死体は焼死体だ。これもやっぱり乾いてる。
土左衛門からしばらくして、僕もまたもう一体の死体を見る。母親だ。トラック事故で下に巻き込まれ、数十m引きずられたらしいけど、雪道でほぼ外傷はなかった。見たのは病院の酸素テントのなかだった。引っ張り出したときは心停止だったそうだ。が、僕がみたそれはどうやら「生きてる」らしかった。「余計なことすんな!」
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