トカゲと私/スプートニク
くぐもった声で私の唇を鼻先で押し開き舌の上に前足を乗せた
涙が出た
トカゲはのどの奥へと進んでいく
私はトカゲを口にふくみ舌先で背中をなぞる
トカゲが振り返りもせず先へ進むので寂しくなってしまい
前歯でしっぽを甘噛みすると
のどの奥から小さな舌打ちが聞こえた
舌打ちはトカゲの癖だ
「しかたがないない餞別だ」とトカゲはしっぽを切り離した
「ゴクリ」
勢いでトカゲを飲み込んでしまった
彼が友人と笑いながらこっちへやって来た
「おめでとう」
彼の友人と思っていたのは私の学生時代の友人だった
「ありがとう」
私はすごく幸せな気持ちがした
「ありがとう」
涙
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