トカゲと私/スプートニク
てきた
「とてもキレイだよ」
まるで夜みたいだ
トカゲはこの七年間 一度も嘘をついたことがなかったので
私は素直に嬉しがった
「君が困っているんじゃないかと思って」
ほんの気持ち とトカゲは正方形の小さなピルケースを差し出した
中には赤い粒が二粒 金色の粒が一粒
「寂しくなるよ」トカゲの目に涙が浮かぶ
トカゲが泣くのを初めて見た
「人一倍欲の深い女だったよ」トカゲは愛おしそうに瞬きをする
夜空色のドレスをコロコロとトカゲの涙が滑り落ちていく
「泣かないで」
哀しくなってしまったのに 私は人目を気にして泣けない
トカゲの哀しみはドレスの裾から足首をつたい
太股を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)