散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
いる。また、萩原朔太郎の作品に顕著に見られたような、いわば「そのままの散文性」というものからも、かけ離れている。散文の体裁を取りながらも、これはもはや詩でしかありえない。戦前の散文詩には、これを詩と名づけなくても良いのではないかと思わせるようなものが、いくつかあったことは否定出来ない。たとえ後世に名を残した著名な詩人であっても、当時生まれたばかりのジャンルであった散文詩を上手に手なずけることは、至難の業だったのだ。
 しかし、田村隆一を初めとする詩誌「荒地」の同人たちが、戦前のモダニズムからの影響を受けていることは確かである。それにもかかわらず、この「秋」という作品は、モダニズムの弱点であった読
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