散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
た読者をはねのけるような晦渋さからは隔たっている。戦前のモダニズムから敗戦を通して戦後詩へ。この流れの中で、戦後詩人たちはモダニズム(およびそれに隣接するシュールリアリズム)からの影響を咀嚼して、それを乗り越えているのだ。その乗り越えの鍵となったものが、敗戦体験であったのだろうということは、容易に想像出来る。



 戦後間もない時期に優れた散文詩を書きえたのは、何も田村隆一ひとりに留まらない。一九五〇年代になって雨後の筍のように大挙して出現した新しい詩人たちは、田村隆一と同様に、戦前の散文詩から大きく進展した作品をものしている。その一例として、大岡信の作品を取り上げよう。



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