散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
る 鳥肌たつ生のフィクション! ドアの外へ 不眠都市とその衛星都市 七つの海と巨大な砂漠 夏のペテルスブルグから冬のパリへ 女は激烈に唄った まだ愛してる まだ愛してる そして東京 秋! 世界はぼくの手で組み立てられ アンテナの下で夢みている この時 ソナタ形式による覚醒の一瞬間を 諸君自らに問うがいい……あたしは願う 死ぬことの自由を 拍手が起りはじめた 僕は椅子から立ち上る 母さん!

(田村隆一「秋」全行)}

 ここには戦前の散文詩に見られたような、無意味な過剰さや曖昧さは存在しない。たとえ何が書いてあるのかわからなくても、ひとつひとつの言葉が、あるべきところに丹念に配置されている
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