散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
した私を咬み殺す、その最後の日である。

(粕谷栄市「刑罰」全行)}

 一九七一年に出版された粕谷栄市の第一詩集『世界の構造』からの一篇である。この詩人は、これ以降現在に至るまで、いくつかの例外を除いて散文詩しか発表していない。散文詩にとりつかれたこの詩人が、石原吉郎に師事していたという事実は面白い。石原吉郎といえば、きわめて凝縮度の高い張りつめたような行分け詩を多く残した。どちらかといえば、散文詩との縁が薄い詩人である。散文詩の申し子のような粕谷栄市と、石原吉郎。この対比には、散文詩と行分け詩の間に秘められた、見えない鍵が横たわっているような気がする。



 戦前から七〇年
[次のページ]
戻る   Point(18)