散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
、更に多くの橋桁。橋桁のなかの橋桁。川に沿って貨物列車がでてくる。警笛が鳴る。しかし誰ひとりゐない。そして澱んだ水も動かない。犬が一匹。鉄橋の鎖された黒い籠のなかに現像される。場末はわたしを倦ませる。十二月の日暮、没(き)える太陽(ひ)は投げられた石よりも迅(はや)い。わたしは草の枯れた崖の下を歩く。
(春山行夫「ALBUM(澱んだ運河)」全行)
郵便局といふものは、港や停車場と同じく、人生の遠い旅情を思はすところの、悲しいのすたるじやの存在である。局員はあわただしげにスタンプを捺し、人々は窓口に群がつている。わけても貧しい女工の群が、日給の貯金通帳を手にしなが
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