散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
密度はふくれあがり ぽつりと落ちた血のあとを中心にゆっくりと男はまわる 頭のあたりは半透明に液化してゆるゆる漂いだし かすかな音を吸いこんで家々の戸がバタバタとひらき 白くてかたいいきものたちが街にあらわれみちあふれる。星たちは宙をとびめぐって時に街々へ褐色の液体を放射するが街路のしめったきしめきは高まるのでもなく 男は巨大な肉塊にふくれ 白くてかたいいきものたちにみるまに喰いちぎられては逆にそれらを吸いつけくわえ のみこみ 再びふくれるくりかえし呼吸のように波うつ男の表面はやがて せわしく動く無数の顔でちりばめられ そのまま ものいわぬ喧噪をひきつれて街を進みはじめる。窓々から白い肉の剥片がはげ
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