散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
俊太郎はその代表的な存在だろう。この国民詩人が本格的に散文詩を手がけるようになるのは、一九六〇年代になってからであり、五〇年代における谷川は、もっぱら行分け形式で抒情を発揮することに精力を傾けていた)。



 六〇年代に入ると、散文詩はより広く詩人たちの間に行き渡るようになる。それまでの方法を発展させ、新しい形に作り変える作業が詩の世界全体で起こるようになり、当然、詩はより複雑になっていき、それと歩調を合わせて散文詩も複雑化していった。いや、むしろ詩の複雑化を散文詩がリードしていったと言った方が正しいかもしれない。そう見えるほど、この時期は散文詩が目立って増加している。五〇年代にはまだ
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