散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
3」全行)}
この作品の中では、戦前の散文詩からは考えられなかったような抒情性が実現している。何も散文詩だからといって抒情を廃棄することはない、散文脈の中でこそ発揮される抒情もありうる。そのことをこの詩は見事に証明している。面白いのは、散文詩でありながら、下手な行分け詩よりもよっぽどリズムを感じさせるところだ。一連目と二連目の書き出しが相似形を成しているところから、それは容易に感じ取られる。
しかしそれでもなお、一九五〇年代というこの時期、散文詩はまだ発展途上であった。様々な散文詩が書かれたが、詩人たちの中にはまだおっかなびっくりというか、散文詩に手を染めていない者も多かった(谷川俊太
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