散文詩に梱包されて/岡部淳太郎
 
引用= ぼくの黄金の爪の内部の瀧の飛沫に濡れた客間に襲来するひとりの純粋直観の女性。 彼女の指の上に光った金剛石が狩猟者に踏みこまれていたか否かをぼくは問わない。 彼女の水平であり同時に垂直である乳房は飽和した秤器のような衣服に包まれている。 蝋の国の天災を、彼女の仄かな髭が物語る。 彼女は時間を燃焼しつつある口紅の鏡玉の前後左右を動いている。 人称の秘密。 時の感覚。 おお時間の痕跡はぼくの正六面体の室内を雪のように激変せしめる。(以下略)

(瀧口修造「絶対への接吻」より)


 澱んだ運河に材木がうつつて、そこにも材木が浮いてゐる。縦横に計算せられた鉄橋の桁。圧縮せられた空間に、更
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