自己の言語回路からの自由へー九鬼周造著『日本詩の押韻』私解ー/狸亭
の歴史を体験してみようと思い立ったのだから、当
分の間は処置なしである。
九鬼は言う。「およそ形式に束縛を感ずるのは詩人にとって決して譽ではない。みづか
ら客観的法則に従ふとき、詩人は自然のやうな自由を感ずる筈である。なぜならば、表現
界の客観的法則に従ふ主観の受動は、表現界を創造する主観の能動にほかならない。受動
はパトスであることによって受動から能動へと反転する。表現は自己犠牲を媒介として自
己肯定を実現するのである。法則を拘束として意識しないところに、藝術家としての、ま
た人としての偉大さとパトスの創造力とがある。」
道なお遠し、しかし今は行ける処まで行ってみるし
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