自己の言語回路からの自由へー九鬼周造著『日本詩の押韻』私解ー/狸亭
った使い慣れた表現が、音律上の制約によって捜された言葉と衝突し、思わぬイメー
ジの転換に驚く。「形式上の束縛」が緊張を高め、思考が発展し、馴れあった自己の言語
回路から自由になると同時に思わぬ言葉との出会いの喜びがある。
最近も私の押韻定型詩に対して、「なんだかキュークツそうですね。」というお便りを
貰ったし、仲間からも概ね同様な評価を戴いているが、これは明白に、私の作品が未熟で
あるに過ぎないのであって、押韻の故に、ではない。古今東西千年を優に越える押韻詩の
伝統はわが口語現代詩にはきわめて少なく、まだその試みは始まったばかりなのだ。私は、
我が身をもって気の遠くなるような詩の歴
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