自己の言語回路からの自由へー九鬼周造著『日本詩の押韻』私解ー/狸亭
 

「およそ押韻の原型は二句のある応和である。」と、九鬼周造は言い「『古事記』の伊邪
那岐、伊邪那美二神の親しみ詞」として

 あなにやしえおとこを
 あなにやしえおとめを

を挙げて「「韻の形態」について述べているが面白い指摘だ。
 
五十三歳で没した稀有な文人哲学者の押韻に関する周到な考察は、著者のパリ滞在中
(一九二七年)即ち著者三十代後半から帰国後の四十代後半に至る、ほぼ十年余をかけた
執念の達成であり、古今東西の和漢洋の驚くべき大量の詩書を渉猟しつくした名著で、再
読三読する度に時間を超えて私を撃つ。
 
九鬼が詩の「内容と形式」について説く時、それは人生の
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