自己の言語回路からの自由へー九鬼周造著『日本詩の押韻』私解ー/狸亭
い。辛く厳しい時代を経て生き続けて
来た先達の歴史を、バトンタッチのようにある時点で受け取ったわけではない。限られた
生の時間の大部分を伴走しながら、少しずつずれながら、生きている。歴史は書物の中や
遠い過去にのみあるのではなく、生きている一人ひとりの生身の現在の裡にある。情報量
も激増し、空間的にも世界は狭くなった。ということは時間的にもひどく濃縮された場所
にいるのではないか。その気になれば私たちは中東の砂漠に立つことも出来るし、古代そ
のままのインドの村にいることも可能だ。まして世界の言語に直接接することや、時間軸
を取ってみても、驚くべき量の書物を通して、多少とも想像力を働か
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