名付けについて(二流詩人7つの条件補遺2)/佐々宝砂
と一生このことで悩むだろう。しかし他者を理解したいという欲望は消せないし、言葉を使わないで暮らすこともできまい。詩書きをやめることすらできそうにない。そこで私は暫定的措置を講じた。とりあえずは、「名付けられたくない」という他者の権利を侵害しない題材で詩を書こうと思い、妖怪を書いたり虫を書いたりしてきた。
私の文章、特に私の詩は基本的に「名付け」の精神を持っていて、博物学的だ。「私にとってこれはこれこれこういうものである」ということを伝えるのが私本来の詩であって、「私は哀しい(または嬉しい)。私はあなたが好き(または嫌い)なのよ」ということを伝える詩は、あまり私らしくない。念のため書いておくが
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