きょーふのこんげん/佐々宝砂
 
地面に開く、なんてのは序の口で、そのうち人体にも開く。穴が開いて、人間はそれでも生きている。そして生きているのか死んでいるのかよくわからないまま穴に飲み込まれて、消滅する。あれは心底こわかった。

倉阪鬼一郎の「階段」を読んだのはもういいトシになってからだったけど、とてもこわかった。行方不明になった男の部屋の押入に、とーとつに階段があるとゆーただそれだけの話・・・だと書いてもいいよな、まあとにかくそんな話だ。押入に階段があって、隣の部屋や屋根に階段は通じていない。どこかに通じているかもしれないし通じていないかもしれない、わけのわからない階段が、唐突に、そこにある。私はそういうのが怖いのだ。

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