名乗りについて(二流詩人7つの条件補遺1)/佐々宝砂
い。だが、そうは思っても、私は夫の姓を名乗らない。私は自分の姓が好きなのだ。自分の好きな名前を名乗る自由を奪われると、私は自分の本質をおびやかされるような気がする。夫の姓で呼ばれることと、夫の姓を名乗ることは、一見似ているけれど明確に違う。
名乗りとは、自分自身を名付けることである。自分を定義し、自分の枠組みを決定し、自分を他の存在から区別し、「私はこういう存在なのだ!」と外部に向かって誇り高くアピールすることである。つまり、名乗るとは、オトナになるということだ。アイデンティティーを確立することだ。アイデンティティーの確立がなされていれば、ひとは他人の言うことをたいして気にしない。他人にとや
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