キルトに綴る、その鍵と/プテラノドン
いると
思えてきて、そのまま夜を迎えるつもりだった。
それは多分、見習い会計士の彼女が
意味深な表情を浮かべ窓の外へとよそ見する、当たらずしも遠からず、
そんな昼下がりを二人は過ごしているんじゃないかと感じたせい。
「だからこれは、君の手じゃないか?」と、彼は
眠りに着く前に訊ねた。すると
「御名答!」と言って、例の老人が扉の向こうに再び現れる。
さっと女の手が離れた。見計らっていたかのように
老人はバタンと扉を閉めた。(なんてもの悲しい音だろう)
鍵穴から、オフィスの中を歩き回ったり
忙しくパソコンのキーボードを叩く音が洩れている。
男は彼女の存在を確認しようと、扉に手
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