遠い猫/チアーヌ
 
安心だ。
そしてわたしは猫にいい子にしているようによく言い聞かせ、会社に行った。

夜はなるべく早く家に帰ろうと思っていたのだけれど、急な打ち合わせが入った上にそれが長引いて、すっかり遅くなってしまった。息せき切って家に戻ると、テレビの音がした。夫が帰っているのだ。
「ただいま」
リビングに入ると、夫がちら、とわたしのほうに振り向いて、不機嫌そうにチャンネルを変えた。
「おかえり。っていうか、どういうことだよ?これ」
「え?何のこと?」
「いきなり猫なんか飼ってさ。相談もなく」
「何言ってるの?この猫を連れて来たのはあなたでしょ?わたしだって昨日の夜びっくりしたんだから」
「二
[次のページ]
戻る   Point(4)