遠い猫/チアーヌ
 
って、わたしはゆっくりと寝室のドアを開けた。少し怖かったが、ほうっておくわけにもいかない。
寝室のドアを開けると、廊下がある。玄関にまっすぐ向かっている。
廊下に猫はいなかった。
わたしは猫の気配のするほうへ、そっと歩き出した。そこは、夫が寝ているはずの部屋だった。カリカリ、カリカリ、夫の寝室の内側から猫が引っ掻いているらしい音が響いていた。間違いない。猫はここにいるのだ。
わたしはそっとドアノブを回した。夫がいれば、鍵がかかっていることの方が多い。しかし、すぐに開いて、中から、背中が黒くてお腹が白い、ぽっちゃりと太った大きい猫がゆらりと出てきた。
わたしは息を呑んだ。やはり猫がいたのだ
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