遠い猫/チアーヌ
出した。
そうだ。
立ち退きになった住宅街の端の家の猫だ。
その家では、おじさんとおばさんが二人きりで暮らしていた。
わたしよりもずいぶん年上の息子が一人居て、息子は自立して家を出たらしく、もう長いことその家にはおじさんとおばさんと猫だけが暮らしていたのだ。
おじさんとおばさんとは言っても、もう二人ともかなり年を取っていて、おじいさんとおばあさん、に近い雰囲気だった。
わたしが猫目当てに遊びに行くと、おばさんが飴をくれたりした。おじさんはいつも静かにテレビを見ながら座っていた。おばさんがときどき、古いポットでお茶を入れて、おじさんの前に出したりしていた。
おじさんとおばさんは痩せてい
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