吉岡実(奇怪な絵画)/岡部淳太郎
吉岡実が後続の詩人たちに与えた影響は大きい。七十年代以降の日本の現代詩は、吉岡実がいなかったらまったく違った姿になっていたのではないだろうか。
ここでは吉岡実の『静物』『僧侶』の二つの詩集を中心に、『紡錘形』『静かな家』までの四冊の詩集について少し語ってみたい。この五十年代から六十年代にかけての吉岡実の詩業が、後続の詩人たちに計り知れない影響を与えていると思うからだ(それと、正直に言えば、後期の詩に関しては、僕自身いまだに読みこめていないと感じる)。
まずは、吉岡実を語る際によく引用されるこの詩から。
{引用=夜の器の硬い面の内で
あざやかさを増してくる
秋のくだもの
り
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