幻の人柱 /服部 剛
 
を続けている

川の水面に乗り出すように
青や紫の紫陽花の顔達は揺れて
大きい葉の上に乗ったかたつむりは
風にぐらりと揺れても焦りを知らず

 ぐるぐる と・・・

朝の電車の吊り革に重い身をぶらさげ瞳を閉じる
ポケットに入れた腕時計の代わりに
かたつむりの渦巻きを想うと
ゆがんでいく「現実」の情景・・・

机の上に山積みの書類とにらめっこしている
上司の顔はゆるやかに
数年前美術館で買った図録の中の
ピカソが描いた「可笑しな顔」の男に重なってゆく

今日も職場へと伸びるアスファルト
歩道橋の下でダンボールに住む人が

「どうでもいいさ・・・」


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