幻の人柱 /服部 剛
 

と呟いた

雲の薄れた向こうでぼんやりにじむ朝の光の彼方から

「あきらめないで・・・」

と忘れた頃に現れる天使の声が囁いた

アスファルトの一本道の向こうの大きい公園のあたり
天と地の間をつなぐように
薄汚れた衣をまとう独りの巨人の幻が
両腕を開いて立っている

降り始めた雨に濡れながら
地面に十本の裸足の指を食い込ませ
結んだ唇の裏側に
変色して磨り減った上下の歯を
今日の日も噛み締めて 




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