「日本文学盛衰史」書評/佐々宝砂
りから私は戸惑いを感じはじめる。葬儀に参列した夏目漱石は森鴎外に向かって「たまごっちは手に入らないか?」と訊ね、葬儀の受付をしていた石川啄木(石川一)は、「あほやねん、あほやねん、桂銀淑(ケイウンスク)がくり返すまたつらき真理を」なんていう歌を作ったりするのだ。このわざとらしい作者の作為を笑っていいのかどうか、この時点の私にはまだわからない。
続いて私が見せられるのは、啄木のローマ字日記だ。PHSと伝言ダイヤルを駆使して女子高生と援交しまくり、アダルトビデオを借りまくる啄木。この行動は、啄木らしいといえば非常に啄木らしいので、ふんふんつまりそういう小説なのね、明治の文豪連中の生活と現代をま
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